『借りぐらしのアリエッティ』

今度の「映画の日」は日曜日なので、シネコンは混み合うことが予想される。いまかかっているものでは『借りぐらしのアリエッティ』と『インセプション』を観たいのだが、前者のほうが家族連れに好まれるので、日曜は込むだろう。ということで、前者を平日に観ておこうと思い、観てきた次第。
周知の通り、宮崎駿はこの作品では「企画」で、監督ではない。それで正解だったと思う。しかしながらジブリ作品はジブリ作品である。過去の宮崎作品の作風は、真面目すぎるほど継承されている。自然対人間という、愚直すぎるほどの対比も。そしてそれらの調和をはかろうとする良心も。いわゆる声優をあまり使わず、手書きにこだわるという制作上の方針も。
1つだけネタバレしておくと、アリエッティダンゴムシをかわいがるシーンは、どうしてもナウシカを連想させた。ほかにもアリエッティの部屋の雰囲気など、ナウシカを思い起こさせる部分はいくつかある。
悪い作品ではない。完成度はそれなりに高い。僕としては、『ポニョ』よりはいい作品だと思う。過去のジブリ作品の静謐な部分が純化されたという印象がある。次の作品では、過去のジブリ作品でもしばしば現れてきた、荒々しい部分を期待したい。10.7.30


追伸;
この映画を宣伝する横長のポスターは、印象派の絵画、とくにモネを連想させる。そして緑豊かな土地に生きるこびとたち――「こびと」という言葉はATOKでは漢字に変換されない!――という設定のもつイメージは、ブライアン・オールディスの未来小説『地球の長い午後』(ハヤカワ文庫)と重なる。そもそも、僕が映画版『ナウシカ』を初めて観たときも、この小説を連想したのだが。