「アメリカ、グアテマラでの梅毒実験を謝罪」など

 アメリカでまた1つ、人体実験の暗い歴史が浮かびあがってきた。
 各紙報道しているが、日本語で読めるものなかでは、やはりCNNが詳しい。

ワシントン(CNN) 米政府は10月1日、米国の医師が中米グアテマラで1946〜48年、性産業従事の女性、刑務所の受刑者や精神病院の患者らを対象に新薬の効果を確認する目的で故意に梅毒感染の実験を行っていた事実を明らかにし、同国政府に謝罪を表明した。〔略〕グアテマラアラバマ州での両実験はいずれも米公衆衛生当局所属の医師によって行われていた。この医師は2003年に死亡している。実験の場所としてグアテマラが選ばれた背景には、売春が当時合法で、刑務所受刑者が売春婦を獄内に呼ぶことを許可されていた事情などがあるという。/実験に必要な資金は米国立衛生研究所が提供していたとみられる。〔略〕

http://www.cnn.co.jp/usa/30000398.html

 過去の行いを現在の倫理観で裁くのは、「後出しジャンケン」みたいなことで、あまりよろしくないとは思うが……犠牲となったのは、性産業従事の女性、囚人、精神疾患患者と聞くと、生命倫理問題の構造は、昔もいまも、変わっていないと思う。臨床試験アウトソーシング、臓器売買、幹細胞ツーリズム、生殖ツーリズム……。
 以下、英語圏の記事もリストアップしておく。


 論文は「“通常の曝露”と梅毒の予防接種:1946〜1948年のグアテマラにおけるPHS(公衆衛生局)の“タスキギー”医師」。『政策史雑誌』来年1月号に掲載予定だが、PDFはすでにネットに浮かんでいる。僕は『ネイチャー』のブログのリンクからゲット。「著者の許可を表明することなく、引用してはならない」と書かれているけど、誰でも無料でダウンロードできるものについて、そう言われてもね……。


“Normal Exposure” and Inoculation Syphilis: A PHS “Tuskegee” Doctor in Guatemala, 1946-48
http://www.wellesley.edu/WomenSt/Reverby%20Normal%20Exposure.pdf


 それはともかく、この事実は、研究者があの悪名高いタスキギー事件を調べていた過程で発覚したという。タスキギー事件と違うのは、発覚してからすぐに、大統領が謝罪したことだ。
 何らかの教訓になればいいと思う。

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