『SPACE BATTLESHIPヤマト』

 昨日と今日、映画の試写会があったはずなのだが、仕事をしているうちに忘れてしまった。せっかく招待状を送ってくれる配給会社さんに申し訳ない……。
 いったん帰室してから、いつものシネコンで、『SPACE BATTLESHIPヤマト』を観る。
 僕が生まれて初めて映画館で観た映画は、たぶん、『宇宙戦艦ヤマト』の映画版だったと思う。正確にいえば、それと同時上映されていた『デスレース2001』だったが(笑)。当時は入場規制もなく、こんな暴力映画がアニメ映画と同時上映されていたのである。
 それはともかく、まったく期待せずに観た実写版『ヤマト』、結論からいえば、お世辞にも名作とは言えないまでも、ボロクソにけなすほどのものでもない、といったところか。
 ストーリーは、オリジナルの1作目と2作目(『さらば〜』)を合わせた感じだが、設定を含め、かなりの変更がある。オリジナルへのオマージュも示しつつ、オリジナリティを持とうとした努力は評価したい。少しネタバレしてしまうと、オリジナルの人物設定は、斎藤美奈子の言う「紅一点」の典型だったが、今回は、女性が占める割合がずっと増えていた。森雪がブラックタイガー隊の隊長という行動的なキャラクターに変更されていたことが目立つところだが、通信係の相原や医師の佐渡先生も女性に変更されていた。
 しかし……日本初の本格的SFエンターテインメント、なんて宣伝されているようだけど、これが日本のSF映画の実力だとしたら、ちょっと困る。アクションもメカも、30年前なら許せるが、2010年でこのていどでは情けない。というか、戦闘機のドッグファイトのシーンなんて、『スター・ウォーズ』のそれとほとんど変わらなかった。もう少しネタバレしてしてしまうと、古代進がアナライザーといっしょに戦闘機に乗って戦うなんてのは、ルークがC3POといっしょに戦闘機に乗って戦うのとまったく同じ。敵の中枢部に乗り込んでいく様子も、既視感がある。
 そして敵の設定が、オリジナルと大きく違う。予告編などでは、オリジナルと何かが違うことがほのめかされいたが、その1つがそれ。オリジナルの敵、ガミラスは、明らかにナチス・ドイツをイメージした帝国だった(そうえば『ガンダム』のジオンもナチスがモデルだろう。『スター・ウォーズ』の銀河帝国も)。ところが今回の実写版では……これもネタバレしてしまうと、ようするに単一の生命体、あるいは昆虫的な社会体である。それって、ハインラインの『宇宙の戦士』(やその映画化『スターシップ・トゥルーパーズ』)など冷戦時代の作品で描かれていた敵のイメージではないか。それらでほのめかされていたのは、たぶん共産主義だったはず。冷戦時代ならともかく……。
 僕としては、今回の実写版『ヤマト』では、敵の正体、主人公が本当に戦うべき相手は、地球の民間軍産複合企業または民営化された国家で、戦争自体、彼らが仕組んだものだったことがわかる、という結末を期待していたのだが……無理か。望みすぎだね。
 しかし、去年のいまごろ観た、アニメ版『ヤマト復活編』に比べれば、ずっといい。いや、あれよりひどい作品はめったにないだろうが……。
 ということで、早くも1980年代に、主人公が戦う相手として民営化された国家を想定していた『エイリアン』、そしてリドリー・スコットの慧眼は先駆的かつ偉大である。その思想は、『スカイ・クロラ』や『第9地区』に継承されている……というか、映画館の外の世界がその通りになった。