『ジーン・ワルツ』

 夕方、途中下車して、いつもと同じ系列だけど、別のところにあるシネコンで、『ジーン・ワルツ』を観る。言わずとしてた海堂尊の小説の映画化。菅野美穂主演。僕は『チーム・バチスタの栄光』などは、映画を観てから小説を読んだのだが、『ジーン・ワルツ』は先に小説を読んでから観た。
 僕はシネコンで映画を観るときはできるだけナイト料金で観るのだが、この作品はなぜか、地元でも途中下車するところでも、その時間帯にはやっていない。だから1800円払ったのだが、いつもは1200円なので、少し高く感じた。
 あまり期待せずに観たのだが、結構面白かった。泣ける。原作を読み、結末を知っている僕でも泣ける。代理出産に批判的な意見をもっていることになっているらしい(?)僕でも泣ける。映画を観て泣きたい人にはオススメ。原作でも、大野病院事件がモデルと思われる事件が背景としてあったが、それが原作よりもクローズアップされている。
 原作ではかなり最後のほうに明らかになるオチが、中盤で明らかにされてしまう。そのほうが最後まで引っ張るよりも多くの観客にとってはわかりやすいからだろう。また原作では最後のクライマックスで出産する妊婦たちのうち1人が、中盤で出産する。これもわかりやすくするためであろう。映画は原作に忠実である必要はない。映画と小説はまったく別のメディアであることはいくら強調しても強調しすぎることはない(小説やマンガが映画化されたとき、「原作のほうが面白い」という感想をよく聞く。また「映画が原作を超えることはめったにない」という感想もよく聞く。どちらもたいへん稚拙な議論である)。
 僕は『チーム・バチスタ』を観て、原作を読んだとき、原作では結構味わいのあるキャラクターが、映画ではバカっぽい人物にされたことを知り、少し残念に思った。『ジーン・ワルツ』は先に小説を読んだのだが、そういう印象はなかった。
 原作には『マドンナ・ヴェルデ』という続編がある。これも映画化されるだろう。
 ところで周知のように、海堂尊の小説世界はすべて同一のものである。ある小説で脇役的なキャラクターが、別の小説では主人公だったりする。映画版もそのようにつくられるのだろうか。
 うまくいけば、キェシロフスキの『デカローグ』のようになるかもしれない。監督が違うから難しいかな。

ジーン・ワルツ (新潮文庫)

ジーン・ワルツ (新潮文庫)