『英国王のスピーチ』

 夜、いつものシネコンで『英国王のスピーチ』を観る。アカデミー賞そのほかが示す通りの佳作。それに異論はない。
 舞台となった第二次世界大戦の勃発時は、ラジオの時代であり、話し言葉の巧みさこそが重視される時代であった。その後、時代を制するメディアは、ラジオからテレビへ、テレビからインターネットへと移り変わったが、話し言葉の重要性はなくなったわけではない。音声も動画もインターネットを通じて流れるのだから。
 この映画の主人公・英国王ジョージ6世は有能なアドバイザーを付けることで重要なスピーチを乗り切ったが、そんな人を雇うことなどできない僕は、講義やネットラジオに苦労し続けている。彼は吃音と王としての責任に苦しめられたのが、その苦悩は、いわゆるコミュニケーション・スキルなるものを脅迫的に要求されている現代人のそれと、どれだけ共通性をもつだろうか。