「ヘンリー・ダーガー展〜アメリカン・イノセンス。…」

夕方、ラフォーレ原宿ミュージアム「ヘンリー・ダーガー展〜アメリカン・イノセンス。純真なる妄想が導く『非現実の王国で』」を観る。最終日、しかも日曜日に行ったのは大失敗だった。僕が会場に着いたのは4時ごろだったと思うが、長蛇の列ができていた。しかも若い人ばかり。ダーガーって、いつからこんなにメジャーになったのだろう? 

入り口には、暴力描写が激しい展示物があること、それらはダーガーの世界観を示すためには必要であることの断り書きが明示されていた。当然といえば当然であろう。以前、原美術館で開催されたときには、このような断り書きはなかったように思う。
今回の展示では、作品の間に、時系列でダーガーの生涯がテキストで解説されていた。特徴的だったのはダーガーの書いた長大な小説『非現実の王国で』以外に、ダーガーの“自叙伝”からの引用が多かったこと。いつのまにか研究が進んでいたらしく、ダーガーその人についても多くのことがわかってきたようだ。
またダーガーは、自分が拾い集めた新聞や雑誌のイラストや写真をトレースするなどして『非現実の王国で』の世界をビジュアル化したことが知られているが、その“元ネタ”も少し展示されていた。
あの解説テキストは誰が書いたのだろう? とくに署名はなかったのだが……小出由紀子氏 http://bit.ly/kvIf0W だろうか? その解説によると、ダーガー自叙伝とされているものは、実際にダーガーが自分の生涯について書いた部分はわずかで、残りは空想上の竜巻についての記述だったらしい。ダーガーは自然災害にも関心があったようだ。ダーガーは敬虔なキリスト教徒だったらしいが、彼にとっては、神がいるにもかかわらず、世の中が不正に満ちていることはがまんならないことだったらしい。展示の最後のほうでは、解説テキストがそのことを強調していた。3.11以降に書かれたものだろうか?
「順路」が明快に記されていなかったので、会場を何度もぐるぐると回ってしまい、結果的に2時間ほど鑑賞。会場を出たとき、どっと疲れを感じた。図録を兼ねているというポストカードセットが売り切れで残念。
アール・ブリュットを知ってから20年近くになる。ダーガーに限らず、アール・ブリュットを鑑賞するたびにいつも思うのは、その罪深さだ。ダーガーは、自分がつくりあげた作品世界を他人に見せるなどということは考えてもいなかったのだ。そういう自覚がある者は、あの会場を訪れた人のなかで、僕以外に何人いるだろうか? もちろん僕自身、罪深さを感じながらも堪能してしまったのだが。

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

HENRY DARGER'S ROOM

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