『100,000年後の安全』
朝起床すると、喉が痛い。どうやら風邪をひいてしまったようだ。風邪薬(アセトアミノフェンとリン酸コデインの配合剤)を飲んで、国士舘大学町田キャンパスへ。「生命科学と21世紀社会」第9回として再びファン・ウソク事件について話す。レポートについても指示を出す。レポートも毎回の授業後に書くリアクションペーパーで確認する出席も、単位の「必要条件」ではあっても「十分条件」ではないことを強調する。
終了後、渋谷に移動、レコファンなどで時間調整した後、アップリンクXで『100,000年後の安全』を見る。フィンランドの高レベル放射性廃棄物処分場を取材したドキュメンタリーである。実は、観るまでフランスの映画だと勘違いしていた。フィンランドの映画だが、インタビューのほとんどは英語でなされている。
舞台はフィンランドにある「オンカロ」という高レベル放射性廃棄物処分場。地下500メートルまで掘られた、洞窟のような、要塞のような施設が建設中であり、フィンランド各地から運ばれた放射性廃棄物が置かれ、2100年には封鎖するという。
タイトルからして自明なのだが、カメラは、同施設の責任者や政府関係者に対して、10万年後の人々にここが危険な場所であることを知らせるためにどうしたらいいか、をしつように問い続ける。ある者は何も記さず、忘れ去られるべきだと言い、ある者はあらゆる言語や記号を使って、危険であることを知らせるべきだと言う。ある政府の委員会の委員は、私たちがピラミッドが何のためのものかわからないように、未来の人はこの施設が何のためのものがわからないだろう、と言う。
この議論は社会学者ウルリヒ・ベックが、約3年前の英紙『ガーディアン』に寄稿した論考を彷彿とさせる。
2年前、アメリカ議会は、アメリカにおける核廃棄物投棄によって引き起こされる脅威について、今後1万年間にわたる警告を可能にする言語やシンボルを開発するための専門家委員会を設立した。解決されるべき課題は次のようなものであった。いまから何千年か後、未来の世代にメッセージを送るためにコンセプトやシンボルをいかにデザインするべきか?
http://d.hatena.ne.jp/KAYUKAWA/20110429
日本では、原発はトイレのないマンションとよくいわれるが、ベックは、原発は滑走路のない飛行機である、と言う。どちらも廃棄物処分の問題を意味している。
彼ら〔国家など原子力を推進する「アクター」たち〕は人々に飛行機に乗り込むよう急かしているのだが、滑走路がまだつくられていないのだ。
『10,0000年後の安全』は、オンカロ処分場の様子を淡々と見せ、シンプルな質問を関係者に問いかけることで、同じ問題を提起する。秀逸。
現在、風邪のような症状は、とりあえず治まっている。その一方で、今日は一日中しゃっくりに悩まされていた。しゃっくりを止める方法は何種類かあるようだが、そのうち1つは全身を動かすものなので、人がいるところではできず、閉口した。しかも帰室してからはその方法でも止まらないほどひどくなった。あらためてネットを検索してみると、あるサイトで、ただゆっくりと深く深呼吸を繰り返すだけで治る、と説明されていた。その通りにゆっくりと深く深呼吸を繰り返したら……止まった。
- 作者: ウルリヒベック,Ulrich Beck,東廉,伊藤美登里
- 出版社/メーカー: 法政大学出版局
- 発売日: 1998/10/01
- メディア: 単行本
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