『未知への飛行 フェイルセイフ』

諸事情で『未知への飛行 フェイルセイフ』をDVDで観る。たぶん初めて。
舞台は冷戦時代の、主にアメリカ。機械のミスで、水爆を積んだアメリカの爆撃機がモスクワ攻撃の命令を受けたことになってしまい、国境を越える。アメリカ大統領とソ連議長はホットラインで問題を解決しようと努力するが、結局、水爆はモスクワに落とされる。アメリカはミスを認め、ソ連アメリカが認めたことを認める。そしてアメリカ大統領が決断したこととは…。軍備とはいったい何のためのものかを考えさせられる作品。
空中戦など、いまの目で観ると、当時の映画技術の限界がわかるが、その分、大統領や軍部らの言葉のやりとりはたいへんよく練られている。なかでも、米ソの将軍同士が英語で会話したとき、第二次大戦中どちらもロンドンにいたことがわかり、つかのまの雑談を交わすところなどは、泣かせるシーンだ。
ちなみに「フェイルセイフ」とは、機械に誤動作・誤操作が起きたとき、必ず安全側に自動シフトするようにする、という設計のこと。映画で描かれるのは、その神話のあっけない崩壊である。この映画はあくまでも冷戦下における水爆つまり核爆弾を描いたものだが、「フェイルセイフ」的発想が求められ、かつ、それへの過剰な信頼もまた危ないという意味では、原発や鉄道など非軍事的な巨大システムも同じであろう。