「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」

昨日の午前中、豊田市美術館で「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」を見てきた。東京でやっていたのを、震災の影響で観逃してしまっていたのだが、まさか故郷で観ることになるとは…。昨日が最終日だったので、間に合ってよかった。この展覧会は豊田市制60周年記念事業らしい。

豊田市美術館にはたぶん初めて行った。わりと最近建てられたはずの施設であり、豊田市駅から約1キロも離れたところにある。さすが「クルマの街」。誰もがクルマを持っていることが前提になっている。
周知の通り、フェルメールは現存する作品が30数点しかない。この展覧会でも、展示された作品のうち、フェルメールのものは「地理学者」だけである。副題に「シュテーデル美術館所蔵」とあるように、ドイツのフランクフルトにある同美術館で所蔵されている「地理学者」と、同時代のフランドル諸国で制作された絵画が広く紹介されていた。オランダやベルギーではなくて、ドイツの美術館だということには今日気づいた。
いろいろ印象的なものがあったが、たとえばブリューゲル(子)の「楽園でのエヴァの創造」は、聖書の通り、神らしき人物がアダムの肋骨あたりからイブ(エヴァ)を引っ張りだしているところが描かれていて、こんなにストレートに描いちゃっていいの、と、非キリスト教徒ながら疑問に思ってしまった。フリート「デルフトの旧教会の内部」は、同じ対象で、よく似た構図の絵をどこかで観た記憶があるのだが、思い出せなかった。ベルクハイド「アムステルダムの取引所」などは、200年以上前の作品であるにもかかわらず、僕は2006年に訪れたアムステルダムの雰囲気を思い出させるのに十分であった。ヨーロッパの街の風景は、それほど変わっていないということなのだろう。
本命のフェルメール「地理学者」は、想像していたよりずっと小さな作品だった。配付されていたリーフレットや会場にあったディスプレイで、この絵に写っている小物類が解説されていたのだが、地理学者の着ている上着が「ヤポンス・ロック(日本の着衣)」と呼ばれていて、オランダに輸入されていた日本の着物もしくはその模造品であることには、へえ、と思った。ちなみに「地理学者」に描かれている地図や地球儀、コンパスと同じか、それに類するものの実物も展示されていたのだが、それらは日本の博物館から「特別出品」されたものとのこと。
同展を観た後、そのほかの企画展と常設展、ミュージアムショップを観てから、同美術館を後にする。
なお愛知県ではいま名古屋市美術館で「レンブラント 光の探究/闇の誘惑」が開催されている。これも東京でやっていて僕も観たかったのだが、見逃してしまってた。関東に戻るとき、名古屋に立ち寄って観るつもりなのだが、今日観た展覧会の半券を持っていくと200円割引になるとか。愛知県らしいサービスかもしれない(笑)。