『オランダの光』

諸事情で…というほどでもないか、故郷の愛知県でフェルメールレンブラントを観た影響で、DVDで『オランダの光』を観る。フェルメールをはじめとするオランダの絵画で描かれた光の正体に迫ったドキュメンタリー、といえばいいのだろうか。2005年に日本公開された作品。2006年のオランダ訪問を思い出しながら観た。
ある芸術家は、17世紀のフランドルで描かれた絵画に見られる光は、20世紀に入ってからの干拓で地形が変わったことにより、失われてしまった、と言う。映画は存命の芸術家、美術史家、気象学者などのインタビューのほか、ある一地点からの風景を一年間撮り続けた映像、光をめぐる実験などを通じて、「オランダの光」に迫る。
ヨーロッパ各地を走り回るトラックの運転手らへのインタビューも紹介されていた。みなそれぞれの言葉(フランス語、スペイン語、英語)で、各国の光は微妙に異なる、という。彼らの目に映る風景はきっと、ヴィム・ヴェンダースの『リスボン物語』の冒頭で、主人公がドイツからポルトガルへとクルマで旅する過程で描かれる、目の高さからの光景、その変化であろう。僕も鉄道からであったら、の変化を目で経験したことがあるはずだが、残念ながらその記憶はすでに乏しい。それを経験できるチャンスの多いヨーロッパ人がうらやましい。
数々の絵画が紹介されるが、僕が知っているのはフェルメールゴッホぐらいか。観たことはあるが、題名や作者を思い出せないものもあった。
水の多さと建物の少なさがポイントらしいことは、僕にも納得できた。しかしオランダはオランダでも、おそらくアムステルダムのような都市では、17世紀のフランドルで描かれたような光は、もう存在しないだろう。日本においても、17世紀に存在した「日本の光」と現在の「日本の光」とは違うはずである。いやそれとも、節電によって、わずかながら古きよき「日本の光」が生き返っているのだろうか…。