『TSUNAMI: the aftermath』

今日は、9.11から10年目、3.11から半年の日だった。そのことと関係があるわけではないが、昨日と今日、諸事情で……というより例の事情で、『TSUNAMI』をDVDで観た。同名の韓国映画があるのは知っていたが、それとは違うものを隣町のTSUTAYAで見つけ、借りてみた。イギリス・アメリカ合作で、BBCが制作し、2006年に公開されたテレビ映画らしく、正確なタイトルは『TSUNAMI: the aftermath』。2部に分かれていて、両方合わせると3時間あまりの大作である。たぶん2夜に渡ってで放送されたのだろう。
この作品は、2004年12月に起き、22万人の命を奪ったスマトラ沖地震インド洋大津波を題材として、それに遭遇した人々の行動や感情を描いている。基本的にはフィクションらしいのだが、冒頭でリサーチと証言にもとづいている、と述べられるので、まったくの空想の産物でもないのだろう。
人によっては、まだ観ないほうがいいかもしれない。大津波の発生とその後の様子がきわめてリアルに描かれており、日本人にはどうしても3.11を思い出さざるを得ない。
少し気になったのは、基本的に、観光客や記者、NPOスタッフなど欧米人の視点からのみ描かれていることだ。英語圏のテレビ向けにつくられたものだから、仕方ないといえば仕方ないのだが、あの災害に遭ったのは、当然ながら欧米人だけではない。
第2部で興味深い展開があった。第1部でほのめかされていたことなのだが、ある地震学者(タイ人)がこの津波を想定していた。しかし政府はその警告を無視し、リゾート開発を優先させていた。ティム・ロス演じる記者は、地震学者と開発会社の動きを追う。あるきっかけで手に入った論文によれば、地震津波は、今後もまだ起こる可能性がある。しかし開発会社は津波で破壊された漁村の土地を買い上げ、そこにホテルを立て直そうとする。記者はその危険性を警告する記事を書き上げる。
現代思想』5月合の震災特集で、塚原東吾先生と美馬達哉さんがナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』――最近翻訳されたらしい――を紹介していたが、クラインのいう「セカンド・ツナミ」とは、このテレビ映画で描かれていることかもしれない。
ほとんど外国人の視点で描かれているという限界はあるものの、なかなかの力作であろう。
しかしながら前述したように、描かれている津波とその後の状況の描かれ方は、東日本大震災を思い起こさせずにはいられないので、心の準備ができていない人には観ることをおすすめしない。
そういえば、阪神大震災を描いた映画って、あまり記憶がない。テレビのことはよく知らない。小説ならばある。村上春樹の短編集『神の子どもたちはみな踊る』であり、比較的最近、日本ではなくアメリカで映画化された(阪神大震災をノースリッジ地震に置き換えて)。東日本大地震が映画なり小説なり、フィクションとして作品化される日は、いつか来るのだろうか。作家たちが震災をかみ砕くまでにはしばらくかかりそうだろうし、僕たちがそうしたフィクションを受容できるようになるのもまだ先のことだろう。震災はまだ、目の前の現実なのだ。

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

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