クローン・カムバック?(2)

先日、支払いをして入手した卵子を使ってクローン胚から幹細胞をつくることにアメリカの研究者が成功したことについて、「遺伝学と社会センター」の関係者らが『ネイチャー』に書簡を送り、掲載されたようだ。

クローン技術:研究用卵子の大成功をコントロールせよ


マーシー・ダーノフスキー、スーザン・ベイク・ホーグル、ジュディ・ノースジアン
『ネイチャー』2011年12月1日


 女性の研究用卵子の需要は、体細胞を多能性のある状態へと初期化するためにヒトの卵母細胞を使うクローン技術についてのニュースの後、驚くほど高まっている(S. Noggle et al. Nature 478, 70–75; 2011)。
 この研究で、女性1人から得られた卵子の平均数は16.9個。26個提供した者もいる。これは多くの不妊治療医が最適とみなすもの以上であり、卵巣過剰刺激症候群のリスクを増加させる。研究者たちは過剰反応した症例でホルモン治療をやめたとは言っていない。あまり反応のない女性ではやめたが。
 ノーグルらは、卵子への支払いが、経済的に困窮した女性が、さもなければ避けられるリスクを負うことを促進するかもしれないという懸念を、公正に予測している。しかしノーグルらが支払った8000米ドルという額は、この経済的に困難な時代においては、富裕層においてさえ誘引になるかもしれない。
 女性は研究用卵子提供のリスクと便益を自分自身で評価すべきだと主張する者もいる。しかしインフォームドコンセントは正確な情報提供次第である。不妊治療のための卵子採取の数年後についてでさえも、女性へのリスクは、よく解明されておらず、ほとんど評価されていない――とりわけ医薬品やホルモンによるリスクについては。フォローアップとデータ収集は不十分である。

http://www.geneticsandsociety.org/article.php?id=5974

一方、すでに旧聞に属するが、イギリスのHFEAが、卵子提供者への支払いを増やす方針を認めた。

HFEA、精子および卵子提供サービスを向上させるための新ポリシーに同意


2011年10月19日


 HFEA(ヒトの受精および胚研究認可局)は今日、イギリスにおける精子および卵子提供について、いくつかの重要な決定を行った。この決定は、広範囲で公に行われた協議、「卵子精子を提供すること:ご意見を」に沿ったものである。これは2011年の1月から4月にかけて実施された。
 同局は、体外受精セクター、職能団体、ボランティア組織と協働することによって、ドナーのリクルート、確保、ケアのための積極的アプローチを取ることに同意した。認識を高め、ドナーのケアを向上させ、提供が安全で倫理的な環境でなされ続けることを確実にするために。
 ドナーを確保し、ペーパーワークを最小化する必要性と同様、ドナーを公正に扱い、その貢献を価値あるものとすることについての懸念に取り組むために、同局は、ドナーが受け取ることができる補償を変更することにも同意した。自己負担支出と収入の喪失について上限250ポンドまでを認めている現行の制度は廃止され、クリニックは将来、ドナーの経費をよりよく反映するドナー補償を提供できるようになるだろう。
 新しいスキームは以下のことを含む。

  • 精子ドナーについては、経費を含めて、訪問ごとに定額で35ポンド。
  • 卵子ドナーについては、経費を含めて、提供の周期ごとに定額で750ポンド。

 HFEAの議長リサ・ジャルダン教授は言う。「提供について検討するために、私たちは、それが人々にとって何を意味するのかに焦点をあてました。補助生殖で生まれる人にとって、ドナーにとって、赤ちゃんを持つことを切望する患者にとって、一般の人々にとって。われわれは、おおざっぱなまとめではなく、提供の価値という意味で、補償について検討する権利があると確信しました。HFEAはあるレベルの補償を設定しました。(後略)

http://www.hfea.gov.uk/6700.html

この2つの動きに不穏なものを感じるのは僕だけだろうか。