卵子の遺伝子治療

最近、当ブログは映画の感想ばかりになってしまい、科学や医療を話題にすることが少なくなって、さすがにまずいと思ってます(ツイッターではそうした話題を議論しているのですが)。
せめてメモ書きていどでもこちらに書き残しておきたいと思います。といっても、ツイッターのものをつなげただけですが。
先日、イギリスのHFEAが、卵子提供者への支払いを増やす方針を認めたのですが、それには、いわゆる生殖補助医療以外にも、目標があったようです。
以下、『ネイチャー』より抜粋します。

イギリスは卵子遺伝子治療にねらいを定める
『ネイチャー』2012年1月24日付


公けでの協議と安全性評価が遺伝性疾患を治療する胚操作へ道を開くだろう


 イギリスは、親の遺伝子と第三者のDNAを組み合わせる生殖技術の最初の臨床試験に向けたロードマップをつくり始めている。このアプローチは倫理的疑問を生じさせるが、子どもが稀な遺伝性疾患、たとえば筋ジストロフィーやおよそ5000人に1人に生じる神経疾患を遺伝せずにすむ。
 こうした疾患はミトコンドリア、すなわち細胞の「電源函」の欠陥によって生じる。ミトコンドリアは母親から子どもに卵子を通じて受け継がれる。霊長類と、不完全なヒト卵子の実験では、不完全なミトコンドリアをもつ卵子から遺伝学的素材が抜き取られ、健康なドナーの卵子に移植され、不完全なミトコンドリアが後に残されることを示している。原理的には、結果としてできた卵子は、両親の核DNAとドナーのミトコンドリアDNAの両方をもつ健康な子どもに発生しうる。しかしこの作業は、結局は胚の遺伝子改変になる。これは現在、イギリスでは違法である。また受精した胚の破壊を含む。
 1月19日、イギリス政府の「ヒトの受精および胚研究認可局(HFEA)」は、このプロセスについての公けでの協議を表明した。合法化するための第一歩である。同時に、この国最大の生物医療の支援組織「ウェルカムトラスト」は、この技術の安全性を評価する前臨床実験に資金支出する、と述べた。独立した生命倫理審査も進行中である。「これは規制がどのように機能するか、という格好の事例です。というのは、科学を知りましょう、生命倫理を知りましょう、人々が何を考えているのかを見出しましょう、と言っているからです」と、キングス・カレッジの生殖生物学者ピーター・ブラウドは言う。
 2つの方法が開発されている。前核移植と母方の紡錘の移植だ。アメリカの研究者らはすでに母方の紡錘移植を使って2匹の健康なマカクを誕生させている。その一方でイギリスのニューカッスル大学のダグラス・ターンブルらは、不完全なヒト卵子で前核移植を実施し、ごく少数に正常な発生が起きたことを見出している。(後略)

http://www.nature.com/news/uk-sets-sights-on-gene-therapy-in-eggs-1.9883