『TIME/タイム』

いつものシネコンで『TIME/タイム』を観る。ほんとはしっかりと書きたいのだが、諸事情により、ごく簡単に。
監督はアンドリュー・ニコル。そう、あの『GATTACA(ガタカ)』の監督で、しかもまたもや人々が遺伝子操作されていることが前提となっている未来社会が舞台となる作品。
『GATTACA』は当時の(そしていまの)バイオテクノロジーがそのまま進展したような未来社会を描いていたが、今作はまったく異なる。
人々は25歳になるとそれ以上老いなくなる。この世界では時間=余命が通貨として機能しており、人は働いて時間を稼ぎ、時間でモノやサービスを買う。時間がゼロになればすぐに死ぬ。そして貧富の差は激しい。スラムの人々はその日そのときを削るようにして生きているが、富裕層は永遠に生きる。人々の腕には、時間=余命が掲示され、それが財布のような貯金通帳のようなクレジットカードような役割を果たす。スラムの貧困層は、いつも左腕の数字を気にしながら暮らし、富裕層はそれをスマートなギャンブルに使う。
そう、この映画は一見、SFの装いをしているけど、この世界は映画館の外の世界とほとんど変わらない。とくにアメリカではなおさらであろう。この映画では貧富の差が寿命の差になっているけど、それは現実世界でも同じこと(疑う者は健康格差論を見よ)。時間を貸すことでさらに時間を得る富裕層たちは、さしずめ金融業界であろう。少数の者が豊かになるために、多数の者が苦しむ。現実社会とまったく同じ。登場人物の1人がこの世界を「ダーウィニズム資本主義」と呼んでいたけど、現実世界もその通りでは?
物語としては、『GATTACA』+『ウォール・ストリート』+『俺たちに明日はない』+『ロビンフット』といったところだろうか。
あまり話題になっていないので、期待せずに観たのだが、まあまあ面白かった。『GATTACA』のように長年語り継がれる作品にはならないと思うけど、現代社会をリアルに反映していることは、していないよりはずっといい。