『惑星ソラリス』

昨日のことだが、渋谷のユーロスペースで開催されているタルコフスキー生誕80周年記念映画祭で、『ストーカー』、『サクリファイス』、『惑星ソラリス』を一気観してきた。どれも2時間半ぐらいある対策で、しかもハリウッド映画みたいにドンパチがあるわけじゃないから、さすがに『サクリファイス』ではうとうととしてしまった。
どれもよかったが、いちばん印象に残ったのはやはり『惑星ソラリス』だった。町山智浩さんが、この映画は『インセプション』の元ネタになっていると話していたので、おそらく、主人公の妻が自殺しているという設定の共通性に関係あるのだろうと予想しながら10数年ぶりに(劇場スクリーンでは初めて)観てみた。実際に観てみたところ、主人公たちが無重力状態になるシーンが『インセプション』とよく似ていた。そのほか、グラスか何かがかすかに傾くシーンなども、どこかで観たような。というか、記憶の深層への介入というアイディア自体、類似しているといえば類似している。しかしCGなどなく、セットも最小限(というか、ハリウッドのSF大作に慣れた目からは学芸会レベル)のもので、あそこまで独自の世界をつくれ、そこに観客を引っぱり込める同監督の力量には脱帽。
よく知られていることだが、この映画では、未来都市の様子を再現するために、ただの東京の風景を使っている。ソ連の人から見ると、当時の東京って未来的に見えるんだろうか、という素朴な疑問が浮かんだだけでなく、リドリー・スコットが『ブレードランナー』で近未来のロサンゼルスを描くために、日本語を多様したのは、少しはこのシーンの影響もあるのかな、と思った。
なお今回上映されたものはデジタルリマスターされ、きれいに仕上がっており、劇場で観るのにふさわしいものだった。