『トータル・リコール』

夜、近所のシネコンで『トータル・リコール』を拝見。いうまでもなく、フィリップ・K・ディックの短編「追憶売ります」を原作とし、ポール・バーホーベンが監督し、シュワちゃんが主演した同名作品のリメイクである。監督はレン・ワイズマン、主演はコリン・ファレル。(ちなみに僕の手元には早川文庫版と新潮文庫版の短編集があるが、どちらも訳者は深町真理子。)

今回は作品舞台を地球のみとしているが、その地球が富裕層の暮らす地域と貧困層の暮らす地域とに分かれているのは、昨今の世相を反映しているのだろう。地球にはそれら以外にも人の住めない地域があるのだが、それは核兵器でも生物兵器でもなく、化学兵器によってもたらされたという設定は、以外と新しいかもしれない。原作との距離は、バーホーベン版と同じくらい離れている。つまり基本的な設定以外は独自につくられている。いくつかバーホーベン版へのオマージュらしきシーンもあった。
それより目立ったのは、すでに多くの人が指摘しているように、同じディック原作の『ブレードランナー』との類似である。貧困層が暮らす側の都市の雰囲気は、『ブレードランナー』のロサンゼルスそのものである。そのほかクルマや銃の形状なども似ていたのは僕の気のせいだろうか。(そもそもバーホーベン版『トータル・リコール』も、数年前の作品である『ブレードランナー』の雰囲気を受け継いでいたようにも思う。)
フィフス・エレメント』や『スターウォーズ エピソード1』や同『2』、『JM』などを彷彿とさせるシーンもあった。『マトリックス』や『インセプション』をも想起させたのは、記憶の操作、現実と非現実との横断、それらによる自我の曖昧さといったテーマ系が類似しているからであろう(『ブレードランナー』も含めて、この4作の共通性はきわめて高い)。
僕としては十分に楽しめた。しかし、オマージュ的なシーンがあまりに多いため、オリジナリティが低いと観る評者も少なくないだろう、きっと。


追記:
ラストもまた、バーホーベン版のスピリットを受け継いでいた。『インセプション』と同じということ。