『桐島、部活やめるってよ』、エイジア東京公演

夕方、渋谷TOEIで、観逃していた『桐島、部活やめるってよ』(吉田大八監督)を観る。観る予定には入れていなかった作品だが、あまりに評判がいいので、観ようと思ってまだやっている劇場を探していたところ、ここで始まったようなので、観てみた次第。
舞台は地方の高校。人気者の「桐島」が部活(バレー部)をやめたことにより、以前から存在していた学校内のヒエラルキーとその歪みが一気に明るみに出て、そして一瞬ではあるが、それが崩壊する様子を描いた青春ドラマ。いや、「青春ドラマ」なんてさわやかなものじゃない。描かれるのは、大人社会顔負けの、かなりドロドロとした人間関係である。そのドロドロさは、彼らがまだ高校生であるにもかかわらず、というよりも、まだ高校生であるからこそ、のものであろう。十代の若者が純朴であるなどという神話は、僕はもちろん信じていない。若者を教える身としても。そしてかつての若者としても…。
この映画の舞台は、登場人物がスマホを使っていることから明らかなように現在で、ロケ地は高知らしい。しかし1980年代の終わりの愛知県の高校にも、似たような雰囲気はあった。想像だが、地方の、共学で、エリートばかり(もしくは不良ばかり)が集まる超進学校でなければ、どこでも事情は同じか似たようなものではなかろうか。(都会の高校、男子校または女子校、エリート進学校は違うかもしれない。これも想像。)
この映画は同じ場面、異なる登場人物の視点から何度か見せ直すことによって、彼らの間にある人間関係の醜い溝を明らかにしていく。僕自身はいうまでもなく、映画部の彼に最も強く共感し、かつ、苦い記憶を思い出しながら鑑賞することになった。そして高校を卒業して、予備校に通うようになったとき、底知れぬほどの解放感を得たことも思い出し、彼にこういってやりたくなった。もうすぐだ、もうすぐ解放されるよ、と…。



映画館を出て、そのまま渋谷公会堂へ。高校と同じくらい窮屈だった中学のときによく聴いたエイジアの日本公演を聴く。
エイジアを生で聴くのはたぶん三度目。実をいえば、僕はエイジアや「ロンリーハート」のイエスや「インビジブルタッチ」のジェネシスを遡るかたちでプログレを知ったのである。プログレ好きのなかには、エイジアに否定的な人も少なくないが、僕はそれなりに思い入れがあったりする。
いちおう新譜も出たので聴き込んでおいたのだが、ほとんどの選曲は初期の2枚からだった。(つまり懐メロ大会だった。)セットリストを確認してみると http://t.co/E00kqNU2 、新譜からはわずか2曲? 知らない曲もあった(「Ride Easy」という曲。「Heat of the Moment」のB面でベスト盤に入っているものらしい)。スティーヴ・ハウのソロコーナーもちゃんと(?)あって、「Mood for a Day」と「Second Initial」がプレイされた。前者はイエスの「こわれもの」の収録曲。後者はイエスのライブなどで演奏される曲で、音源化されているかどうかは未確認。サードアルバム「アストラ」からの選曲がなかったのは、ハウが参加していないからだろう。もちろんビル・ペインがボーカルだった時代の曲もなし。
ファーストとセカンドからの選曲ばかりで、中学時代の苦い思い出が蘇った……ようなことはとくになかった(笑)。それなりに楽しいライブだった。音楽的な新しさはとくになかったが、別にいいんじゃない、そういうライブがあっても。