『アイアン・スカイ』

夕方、武蔵野館で『アイアン・スカイ』(ティモ・ブオレンソラ監督)を観る。周知の通り監督がつくったティーザーが何年か前からYouTube経由で話題になり、個人からの出資も集まって制作された映画。第二次世界大戦後に地球を脱出し、月の裏側に潜伏していたナチスがUFOで地球に攻めてくる……とあらすじだけ説明するとなんだか頭が痛くなってくるが、何カ月か前にロフトプラスワンでのイベントで、高橋ヨシキさんが絶賛していたので、観てみた次第。
結論からいうと傑作。今年はまだ3カ月残っているが、今年のベストのかなり上位に入るかもしれない。大爆笑の連続だった。
内容からナチスへのアイロニーは予想していたのだが、アイロニーの対象はナチスだけでなく、アメリカや国際社会にも向いていた。笑えるシーンは何カ所もあったが、どこからどう見てもサラ・ペイリンにしか見えないアメリカ大統領が会議で部下に怒鳴り散らすシーンは、『ヒトラー 最後の12日間』の有名な会議のシーンのパクリ。『ヒトラー』の同シーンは、各国で勝手な字幕を付けられている(日本語圏では「総統閣下」シリーズともいわれる)ことも思い出され、むちゃくちゃ面白かった。作品中で展開される大統領選キャンペーンがナチスプロパガンダを思い起こさせる、というか、実際に月からやってきたナチスが大統領の広報を務めることも合わせて。『博士の異常な愛情』へのオマージュと思われるシーンなどもあった。パンフレットによると、僕は気づかなかったが、『ピンク・フロイド/ザ・ウォール』や『スターウォーズ』へのオマージュもあったようだ。登場人物たちが口にする「ヴァルハラで会おう」という台詞は、ドイツ空軍のエース・パイロットが残した言葉らしい(いま調べて知った)。
とんでもない設定とストーリー展開、CGを駆使したリアルな映像だけでなく、数々のアイロニーやオマージュを含めて、かなり楽しむことができた。
ところで…僕のナチスへの興味って何だと思います? 優生学? 人体実験? もちろん、いまはそうですが、子どものころはナチスって、プラモデルや戦記物(松本零士の「戦場まんがシリーズ」とか)を通じた「娯楽の対象」でしたね。男性諸君では、そういう人って結構いるんじゃないですかね?(笑)