ポール・マッカートニー東京公演

11月19日(火)、ポール・マッカートニーの東京公演を鑑賞した。非の打ち所がないといってもいいほどの素晴らしいものだった。
最近は、セットリストがすぐにネットにアップされるようになり、便利になった。昨夜の公演もすでにアップされている。
http://www.setlist.fm/setlist/paul-mccartney/2013/tokyo-dome-tokyo-japan-13c4e571.html
僕は、新譜『NEW』から1、2曲演って、あとはビートルズ・ナンバー、しかもシングル曲ばかりだと予想していたのだが、いい意味で裏切られた。

NEW

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オープニング曲が「Eight Days a Week」であることはラジオなどで知らされていた。大好きな曲なので、事前に知らなかったらもっと感動したかもしれないが、まあいいだろう。
セットリストを見ればわかる通り、「Jet」ほか、ウイングスのナンバーも結構多い。
「Let Me Roll It」はウイングスのナンバーらしいのだが、「ジミ・ヘンドリックスに捧げる(不正確)」とポールは言った。
「My Valentine」はカヴァー・アルバム『キス・オン・ザ・ボトム』からの選曲だが、歌う前にポールは「ナンシーのために」と言った。モニターには、手話を思われるものが…。どういう含意があるのかは僕にはわからなかった。(後日、ナンシーは現在の妻の名前であり、手話をしていたのはジョニー・デップナタリー・ポートマンで、PVと同じものであることがわかった。またカヴァー・アルバムの収録曲ではあるのだが、この曲はポールのオリジナルであることも。)
キス・オン・ザ・ボトム

キス・オン・ザ・ボトム

「Maybe I'm Amazed」は、僕はずっとウイングスの曲だと思っていたのだが、ファースト・ソロ・アルバムの収録曲であることを比較的最近知った。ポールは歌う前に「リンダのために」と言った。
「ジョンのために」と言って歌った曲もあったはずだが、失念してしまった…。(後日、「ジョンのために」歌ったのは「Here Today」だったことがわかった。http://ro69.jp/live/detail/92451
驚いたのは、「ジョージのために」と言ってマンドリンを持ち、「Something」を歌ったことだ。この曲はいうまでもなく、ビートルズ・ナンバーではあるが、ジョージ・ハリソンの曲である。まさか、ポールのライブでこの曲を聴くとは…20年前、エリック・クラプトンのバンドでジョージ・ハリソンが来日公演したときも、この曲を演奏したのを思い出した。僕は同じ東京ドームでそれを観ている…。
特筆すべきは「Back in the U.S.S.R. 」だ。大好きな曲なので、僕は狂喜乱舞していたのだが、連れ合いが「プッシー・ライオットを応援している」と耳元でささやいた。確かにモニターには「Free Pussy Riot」という文字が写った。僕は恥ずかしながら知らなかったのだが、プッシー・ライオットはロシアの女性パンクバンドで、プーチン批判をしたことによって投獄されてしまったらしい。ポールは彼女らを解放するようプーチンに呼びかけてもいるようだ。
http://newclassic.jp/archives/3283
二度目のアンコールでは、「福島のために…」と「Yesterday」が歌われた。できれば「東北のために…」と歌ってほしかったが、望みすぎであろう。そしてなんと、 「Golden Slumbers」 「Carry That Weight」 「The End」のメドレーが、つまり『アビー・ロード』後半の組曲が再現された。ギターバトルも…。
ビートルズの曲は多くのアーティストによってカヴァーされている。僕はこの秋、クラムボンを観たときには「Lady Madonna」を、元ちとせを観たときには「Ob-La-Di, Ob-La-Da」を、ポール来日記念ということで演らないかと期待したが、どっちもなかった。でも、両曲とも、ポールで聴けてよかった。
僕が青春時代にギターでコピーしたり、バンドで演奏したりした曲が5曲もあったこともうれしかった(「All My Loving」「Maybe I'm Amazed」「Let It Be」「Day Tripper」「I Saw Her Standing There」)。
声もきちんと出ていて、演奏も70代とは思えないほどシャープだった。サービス精神も旺盛。ギターやベースを取り替えるときには必ずポーズが。MCのかなりの部分は日本語だった!(英語のときには、モニターに字幕で訳された。)
とにかく、1万6000円もの高いチケットを買って観る価値のある公演だった。たとえ、ポールの大きさが豆粒ぐらいにしか見えなかったとしても…。



なおこの公演では、何曲かでは口パクだったのでは、という指摘があった。僕は気づかなかった。ロックファン失格であろうか? 素朴な疑問として思うのは、全部オケならともかく、バンドは生で演奏して、ボーカルのみ音源を使うというのは、技術的に可能なことか、かえって難しいのではないか、ということだ。ドラマーがボーカルトラックと同期するメトロノーム音をイヤホンで聴いていたのだろうか? 
ただ、YouTubeには数日前の大阪公演の動画がやまほどアップされており、それらを見る限り、すべて明らかに生である。

また、僕は今日知ったのだが、最近のコンサートは、スマホでの撮影は認められているという。普通に考えると、スマホでの撮影がOKだとすると、すぐバレるような口パクなどしないような気がする。静止画のみOKとのことであって、動画撮影を形式的に禁止しても、それを止めることはもうできず、撮影され、いずれYouTubeなどにアップされることなど、ポールや主催者側は承知しているだろう。だとすると、やはり、すぐにバレる口パクなど、可能な限り避けようとするはず、と考えるのが自然だと思う。大阪公演で生で歌ったため、のどがつぶれてしまい、東京公演では口パクの割合が増えた、ということかもしれない。あるいは、ポールらの演出能力、あるいはカリスマ性があまりに秀でているため、僕を含む大半の観客は声のかすれにすら気づかない一方で、ごく少数の観客は口パクを疑った、というのが真相なのかもしれない。