『マンガで世界を変えようとした男』

昨日午後、京橋テアトル試写室にて、チャーリー・ポール監督『マンガで世界を変えようとした男』の試写を拝見した(まだ公式サイトはない?)。同作はイギリス出身のアメリカ在住マンガ家ラルフ・ステッドマンを追ったドキュメンタリー。ステッドマンは、「マンガ」といっても、日本でいうマンガ、つまりストーリーマンガではなく、どちらかというと「風刺画」に近い作品を書く人。“ゴンゾー・ジャーナリスト”とも呼ばれるハンター・S・トンプソンの『ラスベガスをやっつけろ』のイラストなどで有名な人らしい(僕は不勉強にもステッドマンのことは知らなかった。トンプソンのことはもちろん知っている)。なお『ラスベガス〜』の映画版を主演したジョニー・デップもインタビューとナレーションで出演している。

ハンターは周知の通りすでに故人だが、ステッドマンといっしょのところを撮ったフィルムがずいぶん残っていたらしく、それらが多用されていた。そのほかウィリアム・バロウズテリー・ギリアムなども出演。ステッドマンの作品が加工されてアニメ化された動画も使われていた。よくあるといえばよくある演出ではあるが、悪くはない。ハンターとの交流が、美しい側面でなく確執も描かれていたところもいい。
欲をいえば、ステッドマンのことをよく知らない者としては、1つひとつの作品をもう少しじっくりと見せてほしかった。とくにニクソンの肖像など風刺色の強い作品は興味深いので、美術解説番組のようなな解説的な見せ方をしてもよかったのではないか。おそらく、彼のファンである監督は1つでも多くの作品を見せたいと考え、結果的に、あのようなあわただしい画面切り替えになってしまったのかもしれない。またステッドマンを知っている人を観客として想定したのかもしれない。惜しいが、映画そのものの価値がそれで下がるわけでもない。