池澤夏樹『星に降る雪/修道院』
調子にのってもう1本。
数日前のことだが、遅まきながら、池澤夏樹の『星に降る雪/修道院』(角川書店)を読み終えた。
タイトルでわかる通り、中編2本をまとめたもので、大傑作だった短編集『きみのためのバラ』(新潮社)の感動を思い出しながら期待して読んだ。
「星に降る雪」は、「アステロイド観測隊」(短編集『骨は珊瑚、目は真珠』、文藝春秋に収録)以来の“科学者小説”で、今度はシリアスに来たな、と思って読み進めてみると……『ノルウェイの森』の池澤版だった(苦笑)。
「修道院」は、池澤らしくギリシャが舞台なのだが、驚いたのはその技法。基本的には、日本人らしき男性の一人称で物語が進むのだが、途中、男性が出会ったギリシャ人老婆の一人称、次には老婆の話のなかに出てくるギリシャ人男性の一人称へと、物語語り手がいつのまにか変わり、また最後に日本人男性に戻る。その自然さには舌を巻いた。
それにしても池澤の小説を読むと、旅に出たくなる。そんな時間もカネもないのだが。
『すばらしい新世界』(中公文庫)の続編らしい長編も出ている。そのうち読もう。08.7.12
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