『311』

『サウダーヂ』を観た後、今度はほんとうにカフェで仕事をしてから、夜、オーディトリウム渋谷に戻って、『311』を観る。いわずと知れた、森達也綿井健陽、松林要樹、安岡卓治の共同監督作品。これまたすでに話題になっているもの(賛否両論?)。紹介不要だと思うが、まずはとくに映画化を意図せず、「現認」だけを目的にして、4人が被災地入りして撮影した素材を、後で映画化すると決め、編集したもの。4人のカメラは、福島第一原発近く、陸前高田石巻などの被災地を写す。森さんはあちこちのインタビューなどで、テーマは「後ろめたさ」かな、と述べている通り、カメラは被災者だけでなく、取材者も写す。とくに森さんを。多くの観客は、この4人、とくに森さんには、マスコミとは違った切り口で被災地や被災者に迫ってほしい、と思うだろう。僕もそう思っていた。しかし、なんというか、失礼かもしれないが、森さんが被災者たちに投げる質問は、それほど個性的ではなく、どちらかというと凡庸なものである。あの現場では仕方ないだろう。僕もそれなりの人数の被災者に話を聞いたが、どう問いかけたらいいか迷ったことは何度もある。それが普通だ。その点では、森さんも天才ではないようだ。何カ月か前に観た『大津波のあとで』や『槌音』に比べると、やはりベテランだけあって、完成度ははるかに高い。しかし、もう少し彼ら自身の露出度は低くてもよかったのでは、とも思った。最近多い“自分探し系ドキュメンタリー”じゃないんだから…それともそうなのかな? 松林監督はその後も取材を続けて、1本の作品に仕上げたようだが、森さんはどうなのだろう? 気になるが、これだけでも十分かもしれない。