『オロ』

本日の夕方、いつものテアトル京橋で『オロ』というドキュメンタリー映画を見る。監督は今年77歳だという岩佐寿弥。「オロ」というのはこの映画の主人公である亡命チベット人少年の名前。
オロは6歳のとき、チベットから亡命し、いまはインドのダラムサラという街で暮らし、チベット亡命政府が運営する寄宿学校で学んでいる。最初のシーンでは、監督の「よーい、スタート」という声も入っていることからわかるように、この映画では、映画づくりの過程そのものも物語の一部になっている。若手がつくる“自分探し系”ドキュメンタリーでは珍しくない手法だが、岩佐監督の世代では、あまりないかもしれない。それともそれも僕の偏見か? 
映画では、少年が、チベットである映画を撮ったため中国の警察に逮捕されてしまった男性の家族と交流したり、監督がかつて撮った映画の主役を訪ねるために、監督と一緒にネパールまで旅し、そこでやはり難民家族と交流したりする様子が描かれる。途中、少年は、チベットからの亡命の過程を、涙を流しながら話す。おそらく彼は、平均的な日本人では想像できないほどの苦境を経験していることが示唆される。
しかしながら、彼が逆に監督にカメラを向けたり、インタビューをしたりするシーンなどもあり、シリアスな背景がありながらも、アニメーションの使用なども含めて、なかなか楽しい演出もなされている。少年は、監督が撮るという映画をカンフー映画のようなものと勘違いしていたらしく、棒術を披露するシーンもあるのだが、ちゃんと練習した気配もある。誰に学んだのだろう? なかなかの佳作。